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■183日ルール

 

国際税務上の判断について、183日の滞在という基準(ルール)が意識されることが多くありますが、具体的な適用については誤解が多いのも事実です。例えば、オーストラリアの法律では、日数を基準として、居住者か非居住者であるかの判定をしていますが、この日数基準で、どの日数を基準とするか(どこに線を引くか)という話で、183日という基準を用いている国が多くあります。しかし、日本の税法上、居住者の判定に183日ルールを使うことはありませんし、米国でも、居住者の判定に183日ルールを使うことはありません。米国の税法上、米国国籍や永住権(グリーンカード)を保有している場合、世界のどこに住んでいても米国居住者として扱われ、全世界所得に対し、課税されます。したがって、米国国籍や永住権(グリーンカード)を保有したとしても日本に住んでいる場合、必然的に米国と日本の双方居住者となり、日米租税条約にて調整することとなります。

他には、短期滞在者免税において、183日ルールが使われることがあります。

海外勤務における賃金は、日本国内の会社から日本国内の銀行口座に支払われたとしても、勤務をした現地(外国)で課税されるというのが原則となります。しかし、これによると、たとえ数日間の海外出張でも海外で課税されることとなり、申告・納税等、事務手続きに多大な手間がかかります。そこで租税条約により、一定の場合には、出張先の海外での課税が免除されることとなっています。

例えば、日本人のアメリカ出張であれば、日米租税条約により、滞在日基準(183日ルール)や支払地基準等を満たせば、米国出張中の賃金の支払関係について、米国連邦税の課税は免除されることとなります。このように、183日を超えない場合には米国での課税が免除されるという意味で、183日ルールが使用されています。

蛇足ながら、上記のケースでは滞在期間を含む前後365日間のうちの183日を超えないという意味での183日ルールであり、米国滞在日数が183日を超えると、米国にて確定申告が必要となります。詳細は割愛しますが、ここでも米国独自の183日ルールで、居住者と非居住者のいずれのステータスで確定申告するのかを判断することになります。

居住性の判定、給与所得者の海外出張の場面、米国で申告義務がある場合の申告ステータスの判定などにおいて、183日という基準で判断する場合もあれば、逆に183日という基準が無関係な場面も多くあり、適用状況には、注意が必要です。

 

参考:居住者 非居住者に関しては、下記ページへ。

http://www.i-kansa.com/?p=458

以上

 

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