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■有価証券の貸借 仕訳

有価証券の貸借の仕訳についてです。

 

下記は、金融商品会計に関する実務指針第77項の抜粋です。

 

有価証券の消費貸借契約等は、借手に有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を与え、貸手に貸し付けた有価証券の使用を拘束するから、貸手は有価証券を貸し付けている旨及び貸借対照表価額を注記する。なお、当該有価証券については、貸し付ける直前の有価証券の保有目的区分に従った評価及び会計処理を継続する。

 

借手は、借り入れた有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を有するから、売却により受入処理を行ったものを除き、自己保有部分と担保差入部分とに区分し、その旨及び貸借対照表日の時価を注記する。なお、借手が売却した場合、保管有価証券(有価証券の発生要件を満たすため取得として認識したものを含む。以下同じ)の発生と同時に消滅の認識を行う。

「途中の債券部分の記述は、省略します」

借手が借り入れた有価証券を、空売りした有価証券の引渡しに充当する場合は、それを資産として認識し、同時に返還義務を時価で負債として認識した上で充当時における借り入れた有価証券の時価額を売付有価証券の帳簿価額と相殺し、差額を当期の純損益に計上する。

 

また下記は、金融商品会計に関する実務指針第26項の抜粋です。

 

貸付金及び借入金は、資金の貸借日にその発生を認識し、その返金日に消滅を認識する。

 

 

具体的に仕訳を見ていきましょう。

(参考:金融商品会計に関する実務指針の設例7)

 

<ケース1> 有価証券の借手がその売却又は再担保という自由処分権を有しない場合

 

1.前提条件

(1) 3月1日に有価証券(社債)を保有(帳簿価額99)しているA社(貸手)とB社

(借手)は、額面100(時価101)の有価証券の貸借を約定(受渡日3月4日)した。

当該貸借に係る現金担保は105である。なお、A社は当該有価証券を売買目的で所有

している。

(2) 3月4日に有価証券及び現金の受渡しを行う。

(3) 3月31日(決算日)の有価証券の時価は103である。

(4) 9月30日(中間決算日)の有価証券の時価は104である。

(5) 10月31日に有価証券及び現金の返還を行う。

(6) 担保付の有価証券貸借取引の内容を明示するため、品貸(借)料、利息の処理は

省略する。

 

2.会計処理

 

3/ 1 貸借約定日

A社 仕訳なし

B社 仕訳なし

 

3/ 4 受渡日

A社 (借方)現金 105  (貸方) 借入金 105

B社 (借方)貸付金 105  (貸方) 現金 105

 

3/31 決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 4  (貸方) 有価証券運用損益 4

B社 仕訳なし

 

9/30 中間決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 1  (貸方) 有価証券運用損益 1

B社 仕訳なし

 

10/31 返還日

A社 (借方)借入金 105  (貸方) 現金 105

B社 (借方)現金 105  (貸方) 貸付金 105

 

(注)有価証券の借手に売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を与えないが、有価証券の貸手は自己の有価証券の使用が拘束されているため、借入金に対する担保差入有価証券とみなして、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。

 

<ケース2> 有価証券の借手が、その売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有

価証券を売却した場合

 

1.前提条件

ケース1の前提条件に次の前提条件を追加する。

(1) B社は、6月1日に有価証券を第三者に104で売却する約定を締結する。受渡しは

同月4日である。

(2) B社は、借入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買い付ける約定

を締結する。受渡しは同月31日である。

(3) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。

(4) 洗替法による期首振戻しの仕訳は、仕訳数が増加するので、この設例では、評価

差額の純変動額を計上する仕訳とする(以下同じ。)。

 

2.会計処理

 

3/ 1 貸借約定日

A社 仕訳なし

B社 仕訳なし

 

3/ 4 受渡日

A社 (借方)現金 105  (貸方) 借入金 105

B社 (借方)貸付金 105  (貸方) 現金 105

 

3/31 決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 4  (貸方) 有価証券運用損益 4

B社 仕訳なし

 

6/ 1 売却約定日

A社 仕訳なし

B社 (借方)保管有価証券 104  (貸方) 売却借入有価証券 104

(借方)未収入金   104  (貸方) 保管有価証券   104

 

6/ 4 受渡日

A社 仕訳なし

B社 (借方)現金 104  (貸方) 未収入金 104

 

9/30 中間決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 1  (貸方) 有価証券運用損益 1

B社 (借方)有価証券運用損益 0  (貸方) 売却借入有価証券 0

 

10/27 買付約定日

A社 仕訳なし

B社 (借方)有価証券 107  (貸方) 未払金 107

 

10/31 返還日

A社 (借方)借入金 105  (貸方) 現金 105

B社 (借方)現金       105  (貸方) 貸付金  105

(借方)未払金      107  (貸方) 現金   107

(借方)売却借入有価証券 104  (貸方) 有価証券 107

(借方)有価証券運用損益  3

 

(注)有価証券の貸手は、貸し付けた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、有価証券の借手は、受け入れた有価証券について売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有するため、決算日において、その旨及び貸借対照表日の時価を注記する。ただし、中間決算日においては、保管有価証券を売却し、その返還義務(売却借入有価証券)が貸借対照表に計上されているため、注記は不要である。

 

<ケース3> 有価証券の借手がその売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有価

証券を売付有価証券の決済(ショートカバー)に使用した場合

 

1.前提条件

ケース1の前提条件に次の前提条件を追加する。

(1) B社は、3月1日に有価証券を第三者に102で売却する約定を締結する。受渡しは

同月4日である。これを決済するために、ケース1の前提条件(1)の約定を行った。

(2) B社は、借入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買い付ける約定

を締結する。受渡しは同月31日である。

(3) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。

 

2.会計処理

 

3/ 1 有価証券の売付約定日

A社 仕訳なし

B社 (借方)未収入金 102  (貸方) 売付有価証券 102

 

貸借約定日

A社 仕訳なし

B社 仕訳なし

 

借入有価証券を売付有価証券に充当

A社 仕訳なし

B社 (借方)保管有価証券 101  (貸方) 売却借入有価証券 101

(借方)売付有価証券 102  (貸方) 保管有価証券   101

(貸方)有価証券運用損益   1

 

3/ 4

受渡日(売付け)

A社 仕訳なし

B社 (借方)現金 102  (貸方) 未収入金 102

 

受渡日(借入れ)

A社 (借方)現金 105  (貸方) 借入金 105

B社 (借方)貸付金 105  (貸方) 現金 105

 

3/31 決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 4  (貸方) 有価証券運用損益 4

B社 (借方)有価証券運用損益 2  (貸方) 売却借入有価証券 2

 

9/30 中間決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 1  (貸方) 有価証券運用損益 1

B社 (借方)有価証券運用損益 1  (貸方) 売却借入有価証券 1

 

10/27 買付約定日

 

A社 仕訳なし

B社 (借方)有価証券 107  (貸方) 未払金 107

 

10/31 返還日

A社 (借方)借入金 105  (貸方) 現金 105

B社 (借方)現金 105  (貸方) 貸付金 105

(借方)未払金      107  (貸方) 現金   107

(借方)売却借入有価証券 104  (貸方) 有価証券 107

(借方)有価証券運用損益  3

 

(注)有価証券の貸手は、貸し付けた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、有価証券の借手は、有価証券を売却してその返還義務(売却借入有価証券)が貸借対照表に計上されているため、決算日及び中間決算日とも注記は不要である。

 

<ケース4> 現先取引の対象となった有価証券の買手がその売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有価証券を売付有価証券の決済(ショートカバー)に使用した場合

 

1.前提条件

ケース3の前提条件の有価証券貸借取引を現先取引に置き換える。

(1) B社は、3月1日に有価証券を第三者に102で売却する約定を締結する。受渡しは

同月4日である。これを決済するために、3月1日に有価証券(社債)を保有(帳

簿価額99)しているA社(現先有価証券の売手)とB社(現先有価証券の買手)は、

額面100(時価101)の有価証券の現先取引(現物価額105、先渡価額105)を約定

(受渡日3月4日)した。

(2) 3月4日に有価証券及び現金の受渡しを行う。

(3) 3月31日(決算日)の有価証券の時価は103である。

(4) 9月30日(中間決算日)の有価証券の時価は104である。

(5) B社は、売却した担保受入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買

い付ける約定を締結する。受渡しは同月31日である。

(6) 10月31日に有価証券の現先取引が終了し先渡取引の有価証券と現金が授受される。

(7) 有価証券現先取引の内容を明示するため、現物価額と先渡価額とは同一とした。

(8) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。

 

2.会計処理

有価証券の現先取引は金融処理するが、その場合、現先有価証券の買手は貸付けを

行い、有価証券を担保受入金融資産として受領することになる。売手は借入れを行い、

その担保として有価証券を差し入れることになる。

 

3/ 1有価証券の売付約定日

A社 仕訳なし

B社 (借方)未収入金 102  (貸方) 売付有価証券 102

 

現先取引約定日

A社 仕訳なし

B社 仕訳なし

 

担保受入有価証券を売付有価証券に充当

A社 仕訳なし

B社 (借方)保管有価証券 101  (貸方) 売却担保有価証券 102

(借方)売付有価証券 102  (貸方) 保管有価証券   101

(貸方)有価証券運用損益   1

 

3/ 4受渡日(売付け)

A社 仕訳なし

B社 (借方)現金 102  (貸方) 未収入金 102

 

受渡日(借入れ)

A社 (借方)現金 105  (貸方) 借入金(現先) 105

B社 (借方)貸付金(現先) 105  (貸方) 現金 105

 

3/31 決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 4  (貸方) 有価証券運用損益 4

B社 (借方)有価証券運用損益 2  (貸方) 売却担保有価証券 2

 

9/30 中間決算日(注)

(時価評価)

A社 (借方)有価証券 1  (貸方) 有価証券運用損益 1

B社 (借方)有価証券運用損益 1  (貸方) 売却担保有価証券 1

 

10/27 買付約定日

A社 仕訳なし

B社 (借方)有価証券 107  (貸方) 未払金 107

 

10/31 返還日

A社 (借方)借入金(現先)  105  (貸方) 現金      105

B社 (借方)現金       105  (貸方) 貸付金(現先) 105

(借方)未払金      107  (貸方) 現金      107

(借方)売却担保有価証券 104  (貸方) 有価証券    107

(借方)有価証券運用損益   3

 

(注)現先有価証券の売手は、担保として差し入れた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、現先有価証券の買手は、有価証券を売却してその返還義務(売却担保有価証券)が貸借対照表に計上されているため、決算日及び中間決算日とも注記は不要である。

 

以上

 

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