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のれんは、会社法施行前には「営業権」と呼ばれ、法律上の権利ではありませんが、他の企業より多く収益を稼得することができる無形の源泉・原因を金額で評価したものをいいます。これは、勘定科目の一つで、無形の財産的価値を有するものであり、具体的には、企業のブランド力、高度な技術力、営業上のノウハウ、立地条件等の地理的条件、官公庁の登録・許認可に基づくものなどが挙げられます。
簡単に言えば、のれんとは、企業を買収した時、買収された企業の時価を上回って支払ったプレミアム分の価格のことです。
例えば、時価総額が100億円の企業を120億円で買収したなら、20億円のプレミアムが貸借対照表の資産欄にのれんとして計上されることになります。のれんは企業買収が無事終われば、買収した親会社のバランスシートの資産として記載されますが、その後、永久に載り続けるわけではありません。会計上においては、「減価償却」といって、固定資産に計上されている建物や社用車等、使ったり年数が経過すれば徐々に価値が落ちていくものは、貸借対照表からも、利益からも差し引かれることになります。
のれんを損益にどう反映させるかは会計基準によって異なりますが、建物や社用車同様にのれんは買収コストの1つなのだから、長い年月をかけて少しずつ費用計上し、償却していこうと考えるのが日本基準です。買収が増えるほど償却負担が増えますが、費用が平準化するメリットがあります。一方で、IFRSではのれんの費用を計上しません。そのため、日本基準よりも利益が大きく見えます。ただし、米国基準やIFRSでは、買収先の収益力を毎年厳しくチェックし、収益力が低下すれば減損損失を計上して一括でのれんを償却します。日本基準に比べて年間の利益の押し上げ効果はあるものの、一度に巨額の損失が出る懸念もあります。大型買収のときはどの基準を採用するかでのれんの償却が1000億円を超えるときもあります。1株利益はもちろん、予想PER(株価収益率)なども大きく変動します。企業の実態は変わりありませんが、ものさしを変えると見え方が変わり、株価にも影響を及ぼすことになります。