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税効果の基準(税効果会計基準)が、平成30年6月第一四半期(3月決算の場合)から改正となりました。今回の改正点は大きくⅠ.繰延税金資産および繰延税金負債の表示に係る改正とⅡ.税効果注記事項の追加に分けられるといえますが、実務上のポイントやあまり適用の可能性の無い改正点(子会社株式等に係る将来加算一時差異の論点)も含め、それぞれ解説をしていきます。
⇒IFRSや米国会計基準との整合性を図るため
⇒平成30年4月1日以後開始年度の期首(早期適用可)より強制適用(当期1Q)から!
【現行の繰延税金資産および繰延税金負債の表示】
繰延税金資産および繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産または投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債または固定負債として表示しなければならないこととされます。
ただし、特定の資産・負債に関連しない繰越欠損金等に係る繰延税金資産については、翌期に解消される見込みの一時差異等に係るものは流動資産として、それ以外の一時差異等に係るものは投資その他の資産として表示しなければならないこととされます。
流動資産、流動負債には表示せず、全額を繰延税金資産については投資その他の資産として、繰延税金負債について固定負債として表示しなければならないこととされます。
税務上の繰越欠損金や繰越外国税額控除に係る繰延税金資産など、特定の資産又は負債に関連しない繰延税金資産及び負債については、将来税効果が実現する時期が1年以内か否か(ワンイヤールール)によって分類不要になるので、従来より簡便的になります。
⇒新基準に遡及して比較情報を組み替える。
(なお、ここでは、分類①の会社や子会社株式に関しての説明は割愛します)
⇒ 前期のB/Sを組み替える必要があります。この際、異なる納税主体ごとに表示の組替が必要となり、流動と固定の分類で各々資産・負債と異なる会社(例えば、流動は繰延税金資産、固定は繰延税金負債の時など)に関しては、組替を行うと総資産の金額も変更されてしまいます。
⇒ 今回の改正は、先に述べたように流動と固定の分類で各々資産・負債と異なる会社の場合、総資産が変わってしまいます。つまり、四半期報告書におけるハイライト情報には、総資産を記載する箇所があります。ここに関しても、組替により総資産が変更される場合には、要注意となるため、留意が必要となります。
⇒ 経理の状況前において、財政状態の分析を前年度末からの増減内容を分析することが必要になります。ここで比較対象となるのは、あくまで上記組替を行った後の前年度の貸借対照表となるため、間違わぬよう留意してください。なお、この場合組変え後の数字によっている旨等を記載することも考えられますが、記載例を見る限りでは特段これらに触れてはいません。今後の開示状況に留意しておくことが必要と考えます。
⇒ これらの表示の改正は、当たり前ですが今回の第一四半期報告書より必要になってきますので、早目の対応が必要になるので、留意が必要になります。
今回の改正によって、年度末有価証券報告書における税効果会計注記が、拡充されていますが、大きな点としては、
・評価性引当金額の内訳に関する事項
・税務上の繰越欠損金に関する事項
に分けられますが、より具体的に分けるのであれば、
Ⓐ評価性引当額の内訳に関する数値情報
Ⓑ評価性引当額の内訳に関する定性的な情報
Ⓒ税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報
Ⓓ税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
の4つに分けられると思いますが、それぞれ解説すると以下のとおりとなります。
(現 行)評価性引当額の合計額を注記するのみ
(改正後)重要な税務上の繰越欠損金を注記している場合、評価性引当額を税務上の繰越欠損金に係るものとそれ以外に区分して記載
(現 行)記載なし
(改正後)評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載
☆重要性に関しての考え方
・税負担率の計算基礎となる、税引き前利益の額に対する評価性引当金額(合計額)の変動額の割合が重要な場合は開示。
・なお、税負担率と法定実効税率との間に重要な差異がなく、税率差異の注記を省略している場合、(例えば、当該差異が法定実効税率の100分の5以下である場合)、当該変動の内容を注記することは要しない。
(税効果会計基準一部改正30項)
Point 制度趣旨を勘案すれば、評価性引当額の増減が法定実効税率の100分の5を超えている場合には、説明を要するというように思われます。そのため、たとえ税率差異の注記がないといえど、注記が必要な場合もあるので、留意が必要と思われます。
重要な税務上の繰越欠損金を注記している場合、繰越欠損金に係る以下の情報を繰越期限別に記載する。
・法定実効税率を乗じた額
・評価性引当額
・繰延税金資産の計上額
なお、Ⓐ評価性引当額の数値情報の注記事項として、評価性引当額の合計額を税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減産一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載する場合には、税務上の繰越欠損金の数値情報も記載することになります。
(税効果会計基準一部改正36項)
Point 今後は繰越欠損金の期限ごとの評価性引当の金額の注記が必要になるため、一時差異の解消事業年度などに関して、より適切に算定しないと誤った注記となってしまうリスクがあるため、例えば棚卸資産の評価損認容のスケジュールやその他一時差異のスケジューリング等誤ったスケジュールをすると、誤った開示になってしまうリスクがあるため、留意が必要となります。
税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、回収可能と判断した主な理由を記載する。なお、記載にあたっては、純資産の額に対する税務上の繰延税金資産の額の割合が重要な場合は記載が必要になります。(税効果会計基準一部改正47項)
なお、これら注記に関する改正点を新旧比較でまとめると、以下のとおりとなります。
その他の改正点に関しては、多くの会社が関連しないと思われますが、簡単に解説すると以下のとおりとなります。
これは、子会社株式等において税務上の簿価が会計上の簿価を上回っている場合を想定しているケースです。その他資本剰余金を減資とした有償減資や連結納税の際に保有資産の時価評価を実施した場合、完全支配関係にある国内会社間での寄附金授受があった場合など、極めて特殊な場合に該当するものです。
分類1の会社に関する記載です。実務的にはあまり該当しないことが想定されます。