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有価証券報告書内にて、事業等のリスクの開示が定性的情報として義務化されましたが、実際にどのような開示状況なのでしょうか。現状の開示は、「企業経営者が積極的に自らの事業内容や財務内容を開示すること」となっていますが、実際に皆様の開示状況はどのような状況なのでしょうか(2012年の時に調べた状況です)。
Ⅰ.全体的分析
順位 | 2005年 | 2006年 | 2007年 |
1 | 為替変動 *1 | 法的規制 | 為替変動 |
2 | 法的規制 *1 | 為替変動 | 法的規制 |
3 | 製品市場の変化 | 製品市場の変化 | 製品市場の変化 |
4 | 景気変動 | 景気変動 | 景気変動 |
5 | 原材料市場の変化 | 暴動・テロ | 原材料市場の変化 |
6 | 事業戦略の失敗 | 原材料市場の変化 | 金利変動 |
7 | 金利変動 | 金利変動 | 暴動・テロ |
8 | 資産運用の失敗 | 地震、津波 | 事業戦略の失敗 |
9 | 有価証券価格の変動 | 事業戦略の失敗 | 地震、津波 |
10 | 戦争 | 戦争 | ダンピング |
11 | 有価証券価格の変動 | 機密情報・個人情報の漏洩 | 戦争 |
12 | 現地法令・商慣習の未遵守 | 有価証券価格の変動 | 有価証券価格の変動 |
13 | 地震、津波*2 | ダンピング | 資産運用の失敗 |
14 | 研究開発の失敗 | 研究開発の失敗 | 製造プロセスの欠陥・瑕疵 |
15 | 機密情報・個人情報の漏洩 | 資産運用の失敗 | 現地法令・商慣習の未遵守 |
16 | 火災 | 他社の知的財産権の侵害 | 研究開発の失敗 |
17 | 製造プロセスの欠陥・瑕疵 | 設計の欠陥・瑕疵 | 機密情報・個人情報の漏洩 |
18 | 設計の欠陥・瑕疵 | 製造プロセスの欠陥・瑕疵 | 設計の欠陥・瑕疵 |
19 | 製品検査・試験のミス | 税制の変更 | 火災 |
20 | ダンピング*3 | 他社による知的財産権侵害 | 製品検査・試験のミス |
・株式会社インターリスク総研のリスク情報・レポート「有価証券報告書でのリスク情報開示」より。
対象会社:日経平均225企業
*1:「為替変動」「法的規制」…日本企業の海外展開が影響を与えている。
*2:「地震・津波」…全国各所で地震が発生したことから、事業活動に対する影響への関心が高まっている。
*3:「ダンピング」(競争環境の激化による価格競争によって売上高が減少するリスク)
…新興諸国の企業が新たな競争相手として台頭。
Ⅱ.業種別のリスク記載内容
機械 | 電気機器 | 建設業 | |||||||
順位 | リスク内容 | 開示社数 | 開示割合 | リスク内容 | 開示社数 | 開示割合 | リスク内容 | 開示社数 | 開示割合 |
1 | 為替変動 | 137 | 72% | 知的財産 | 110 | 50% | 法的規制 | 64 | 44% |
2 | 知的財産 | 68 | 36% | 為替変動 | 103 | 46% | 資材価格の動向 | 57 | 39% |
3 | 原材料価格の動向 | 53 | 28% | 経済状況 | 76 | 34% | 取引先の信用リスク | 54 | 37% |
4 | 価格競争 | 48 | 25% | 製品の欠陥 | 70 | 32% | 建設市場の動向 | 36 | 25% |
5 | 技術開発・製品開発 | 43 | 23% | 法的規制 | 69 | 31% | 価格競争 | 17 | 12% |
6 | 経済状況 | 41 | 21% | 個人情報の管理 | 49 | 22% | 不採算工事の発生 | 16 | 11% |
7 | 法的規制 | 40 | 21% | 原材料価格の動向 | 41 | 18% | 事故の発生 | 15 | 10% |
8 | 製品の欠陥 | 26 | 14% | 金利変動 | 29 | 13% | 為替変動 | 9 | 6% |
9 | 景気変動 | 22 | 12% | コンプライアンス | 17 | 8% | 地震津波・災害 | 8 | 5% |
10 | 金利変動 | 14 | 7% | 景気変動 | 15 | 7% | 景気変動 | 5 | 3% |
業種総数 | 191 | 業種総数 | 222 | 業種総数 | 146 |
その他製品 | ゴム製品 | |||||
順位 | リスク内容 | 開示社数 | 開示割合 | リスク内容 | 開示社数 | 開示割合 |
1 | 製品市場 | 47 | 67% | 原材料価格の変動 | 13 | 76% |
2 | 原材料価格の動向 | 45 | 64% | 地震津波・災害リスク | 13 | 76% |
3 | 為替変動 | 43 | 61% | 為替変動 | 11 | 65% |
4 | 価格競争 | 39 | 56% | 製品の欠陥 | 7 | 41% |
5 | 技術開発・製品開発 | 32 | 46% | 法的規制 | 7 | 41% |
6 | 個人情報 | 27 | 39% | 経済状況 | 7 | 41% |
7 | 自然災害 | 23 | 33% | 海外事業への拡大 | 4 | 24% |
8 | 法的規制 | 18 | 26% | 価格競争 | 3 | 18% |
9 | 製品の欠陥 | 18 | 26% | 自動車産業への依存 | 3 | 18% |
10 | 知的財産 | 15 | 21% | 季節変動 | 1 | 6% |
業種総数 | 70 | 業種総数 | 17 |
α:有報サーチ
β:2011年3月期 有価証券報告書
γ:事業等のリスクを範囲として、全体的な傾向で上位のリスクを中心にキーワード検索
Ⅲ.個別事例
リスクに対する会社の対処方針を具体的に記載している会社もあり。
・全日本空輸㈱(2011年3月期):原油価格変動リスク→継続的にヘッジ取引を実施。(2011年は対象数量の約6割のヘッジを実施。)
・NTT都市開発㈱(2011年3月期):災害リスク→BCP(事業継続計画)を推進。
※BCPの対応状況について
帝国データバンクが「BCPに関する企業の意識調査」を実施。(2011年4月、調査対象:2万2,240社、回答企業1万769社(48%))
・東日本震災前のBCP策定率は7.8%、認知度は37.8%。
・今後の対応について25.9%が「新たに策定・見直す」と回答。→非常時の事業継続に対する意識は、確実に高まってきている。
Ⅳ.所見(リスクの捉え方)
・内閣府令では、投資者に重要な影響を及ぼす事項を記載。
→どのような記載するかは各会社の判断。
・重要なポイントは「全社的な観点からリスクを把握し、その中から経営者の判断で重要なリスクを認識する事」「その結果を定期的に見直す事」
→適切なリスク開示が、投資者への信頼や企業価値の向上につながると考えます。
以上