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有価証券報告内にて、開示が必要な資産除去債務関係について、どのような開示を皆様はされているのでしょうか。特に資産除去債務に関しては重要性も含め、どの程度まで開示しており、見積項目をどのように算定しているかなど、色々、注目できる点も多いと思います。そこで、今回は当該資産除去債務の注記状況について、他社の開示状況等を分析してみました。なお、データとしては少し古いので、利用には留意してください。
Ⅰ.全体的分析(平成22年版「経営財務」特別附録 実例集より、2011年3月期第1四半期注記)
・日経225企業のうち3月決算の会社は176社ある。176社のうち131社が除去債務額を開示している。131社の除去債務計上額は総額で1兆7,183億円(うち82%が電力業界)、特別損失での処理額は2,694億円。
・分類(資産除去債務を合理的に見積もることができないケース)
義務の内容 | 会社数 |
賃貸借契約に伴う原状回復義務 | 113 |
有害物質の除去義務 | 7 |
借地権関係(定期借地権等含む) | 7 |
鉱山関係 | 4 |
その他 | 9 |
→導入当初、判断に迷った項目である賃貸借契約に伴う原状回復義務について、多くの企業が開示している結果となっていると判断できるのではないでしょうか。
Ⅱ.個別事例
(1)割引率(α:有報サーチ、β:10年8月期~11年8月期、γ:率で検索)
割引率を開示した会社は684社。そのうち250社程度を見た結果、割引率は主に0.4~2%。それ以外の例は以下の通り。大半が国債等の利子率を使用。アコムは割引期間に対応するスワップレートを採用していました。
会社名 | 割引率 | 割引期間 |
㈱ニヤクコーポレーション | 0.24% | 2年 |
日本カーリット㈱ | 2.47% | 45年 |
ステラケミファ㈱ | 2.88% | 35年 |
住友軽金属工業㈱ | 2.84% | 51年 |
日鉄鉱業㈱ | 4.78% | 11年 |
(2)義務の内容(α:有報サーチ、β:10年8月期~11年8月期、γ:除去債務で検索、包括利益・原状回復・現状回復を除外)
746社が原状回復義務として開示。その他の義務としての開示例は以下の通り。
会社名 | 義務の内容 |
㈱さくらケーシーエス | 神戸市屋外広告物条例の改正に伴う本社ビル等の屋外広告物の撤去義務 |
東京放送HD | 電波法に基づくアナログテレビ中継局における空中線の撤去義務 |
北海道放送 | アナログ放送用アンテナの撤去義務 |
㈱JCLバイオアッセイ | 特定製品に係るフロン類の回収及び建設工事に係る資材の再資源化に関する義務 |
三菱重工業㈱ | 原子力事業に関連し、除去する場合には放射性廃棄物として処理処分することが義務付けられているが、費用の見積りが出来ないとして除去債務を計上していない。 |
西松建設㈱ | 放射線管理関連法令に基づく放射性廃棄物処理義務(当社グループが所有する賃貸医療施設の放射線機器及び周囲遮蔽コンクリートの解体撤去義務) |
Ⅲ.所見
資産除去債務は、計上すべきものが全て計上されているかという網羅性が重要と考えます。賃貸借契約のような一般的な法的義務のほか、地方条例や業界特有の法規制を把握する必要があり、さらに法令の新設や改廃に気を付けなければならないという点も留意点となります。また割引率や割引期間により計上額が異なるため、適切な期間や率を使用する必要と個人的には考えます。