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■有価証券報告書の分析 会計方針の変更の分析

 過年度遡及修正基準が導入されて以降、会計方針の変更等もその取り扱いが変更されましたが、実際には、どのような開示状況が多いのかは、実務的にも非常に気になる点だと思われます。

そこで、今回は会計方針の変更の開示状況について、分析してみました。なお、データとしては少し古いので、利用には留意してください。

Ⅰ.全体的分析

1.監査報告書記載 会計方針の変更の推移

2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
会計方針の変更がある 714 559 475 438
会計方針の変更がない 2390 2462 2468 2415
合計 3104 3021 2943 2853

α:有報サーチ

β:各年3月決算会社 監査報告書より(非上場含む・意見不表明除く)

  • 基準本適用による会計方針の変更含む
  • 全体的に減少傾向
  • 監査報告書に記載されている会計方針の変更は、会社が記載した中から監査人が重要と判断したものを記載 → 会社・監査人と、2段階の判断が入るが、重要な会計方針の変更の推移として、一つの目安になるか

 

2.監査報告書記載 会計方針の変更内容

項目 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 構成比
有価証券の評価基準及び評価方法 1 9 5 0 0%
たな卸資産の評価基準及び評価方法 12 12 1 2 4.8%
固定資産の減価償却方法 39 15 16 12 28.6%
繰延資産の処理方法 0 0 2 0 0%
外貨建ての資産及び負債の本邦通貨への換算基準 7 18 3 1 2.4%
引当金の計上基準 ①213 22 8 6 14.3%
退職給付会計関係 8 11 6 1 2.4%
収益及び費用の計上基準 37 16 6 8 19.0%
計上区分の変更 41 43 26 11 26.1%
ヘッジ会計の方法 0 3 0 0 0%
キャッシュ・フロー計算書 3 3 1 0 0%
セグメント情報 ⑤47 ⑤30 ⑤21 1 2.4%
新会計基準の早期適用 ②82 ③19 ④22 0 0%
その他の変更 3 1 0 0 0%
合計 493 202 117 42 100%

α:経営財務2886号,2934号,2980号,3030号  β:各年3月決算上場会社

  • ①役員退職慰労引当金の新設 152社
  • ②棚卸資産の評価に関する会計基準の早期適用68社
  • ③工事契約に関する会計基準の早期適用15社
  • ④企業結合に関する会計基準の早期適用11社、
  • ⑤事業区分の方法の変更(2008年度37社、2009年度29件、2010年度19件)
  • 毎期変更が多いのは、引当金・減価償却・収益費用計上基準・計上区分。

 

3.収益及び費用の計上基準の変更(2010年度)

収益 認識時点の変更 搬入・船積→検収 1件
より適切な処理へ 期間対応へ 4件
発生主義へ 1件
収益・原価 より適切な処理へ 一括→製品按分 2件

 

4.計上区分の変更(2010年度)

ⅰ原価構成項目の変更

(原価管理の精度向上)

一部販管費→原価 2件
一部原価→販管費 3件
ⅱ重要性が増したことによる変更 営業外→営業・経常 5件
ⅲその他→独立掲記 表示方法の変更?? 1件
  • 遡及基準では、ⅱは表示方法の変更に該当する場合も

 

5.所見

  • コンバージェンスが一段落→早期適用社数の減少
  • 過年度遡及修正の公表→変更時の遡及負担が大きく、適用前ではあるが、「会計方針の変更」について、今まで以上に慎重な判断か

 

Ⅱ.個別分析(定率法から定額法への変更)

定額法採用のトレンドについて

1.過去6年間の推移

α…経営財務2010年8月30日号、有報データベースで作成

β…2005年度から2010年度までの3月期末決算で有報を提出した会社

γ…3月期有報提出会社:決算期が「3月31日」の会社を、文字列「表紙」で検索

定額法への変更会社:対象項目「連結財務諸表作成の基本となる事項の変更」or「重要な会計方針の変更」を 文字列「定額法」で検索し、該当する会社を抽出

 

2.当期の定額法への現状

α…日本公認会計士協会『有報データベース』

β…2011年度6月末を第一四半期とする四半期有報提出会社

γ…対象項目「四半期連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の変更」or「四半期財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の変更」を文字列「定額法」で検索し、そのうち定額法への変更をしている会社について抽出

 

3.今後の動向について

α…経営財務2011年11月14日号 記事「国際財務報告基準対応状況調査」

・第一四半期までに、実際に変更した会社数で言えば、まだ顕在化されていないが、企業の意識では、定額法への変更を検討している会社が相当数にのぼる。

資料Ⅱ-2 IFRSと「定率法」

1.金融庁『 IFRSに関する「誤解」 』

・償却方法は、将来的な資産の経済的便益の消費パターンを反映したものを採用

・定率法と定額法との間に優劣はない。

2.資産の使用実態と「定率法」

実態として定率法が適用されるのは、限定的な事業や事情であると考えられる

・該当するのはハイテク産業、技術革新が顕著な業界等を想定される

・生産力が逓減する類の製造設備の存在

Ⅱ-3.所見

IFRSにおいては、資産の償却にあたり、償却方法・耐用年数などにつき、毎期の見直しを要求している。IFRS以後、あるいはそれ以前に定額法へ変更した会社においては、今後、当該会計方針の変更の開示が増加することなどが想定されます。

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