ブログ

■セグメント情報等開示会計基準の実務上のポイント

平成22年4月1日以降開始する事業年度より、適用されることとなったセグメント情報等開示会計基準ですが、改正の趣旨やその概要、また実務的な留意点をまとめました。

  • 趣旨及び概要

従来の区分方法(事業の種類別、所在地別、海外売上高)による開示を見直し、

マネジメント(企業の最高経営意思決定機関)が、経営意思を決定する際に用いる区分によりセグメント情報を開示しようというもの(マネジメント・アプローチ)。

財務諸表利用者が経営者の視点で企業を理解できる情報を財務諸表に開示することによって、財務諸表利用者に、より有用な情報を提供するため

⇒当該基準の趣旨は、従来の細かい計算を行ってするセグメント情報から、財務諸表利用者が必要とする有用な情報を提供するために改正されたことが大きな制度改正の趣旨となります。従来では、セグメント費用の配分方法など、いわゆる原価計算のように、より正確に算定することが多かったのが実務的に多かったと考えられますが、この基準により、より自由度が高まり、経営者が利用している情報を開示するということが、重要視されるようになりました。

 

○マネジメント・アプローチの特徴

(1)企業の内部組織の構造、すなわち、最高経営意思決定機関が経営上の意思決定を行い、また、企業の業績を評価するために使用する事業部、部門、子会社又は他の内部単位に対応する企業の構成単位に関する情報を提供すること

(2)最高経営意思決定機関が業績を評価するために使用する報告において、特定の金額を配分している場合にのみ、当該金額を構成単位に配分すること

(3)セグメント情報を作成するために採用する会計方針は、最高経営意思決定機関が資源を配分し、業績を評価するための報告の中で使用するものと同一にすること

○ 従来のセグメント情報の問題点

・開示すべきセグメント区分が不明確・不十分であり、財務諸表利用者の期待を満たしていない(企業の恣意的な解釈の結果、開示されているセグメント数が少ないことや単一セグメントとして報告する企業が多い)。

・我が国を代表する大企業の2割近くが単一セグメント、もしくは重要性が低いとの理由で事業の種類別セグメントを作成しておらず、現行制度が十分に機能していない(企業の経営の多角化を適切に反映した情報開示となっていない)。

 

○マネジメント・アプローチによるセグメント情報
経営者の意思決定や業績評価に使用されている情報に基づく一組のセグメント情報
(セグメントの区分方法・測定方法が特定の方法に限定されていない)

その他、大きな変更点としては、減損損失やのれん償却費・のれん未償却残高のセグメント別開示が必要となる。

 

○開示するセグメント情報の範囲

(新基準) 連結を作成していない場合は、個別の注記情報として開示

(旧基準) 連結の注記情報としてのみ開示

 

【実務上の留意点等】

☆マネジメント・アプローチだからといって、簡易な開示でよいの?

勿論、基準の考え方にしたがうと、企業内部で意思決定や業績評価に使用している情報を基礎に開示すれば、制度趣旨に合致しますが、あまりに簡易なものであるならば、会社の意思決定や業績評価の妥当性などについて、疑問をもたれるかもしれません。

このため、あまりに簡易すぎるというのも問題だといえます。

 

☆単一セグメントは良いの?

従来は、単一セグメントで開示している企業も多かったのですが、当該基準を機に複数セグメントで開示する会社も多いと考えられます。ただ、本来の事業として単一のセグメントのものを、無理に複数に分けて開示するというのも、いかがなものと思われます。

この際、会社の組織の状況等も考慮する必要があります。

 

☆部門別の情報も開示する必要があるの?

例えば、社内において業績評価の指標として部門別の管理をしており、これら部門別情報を分離し把握しているとしましょう。この場合、これらの部門情報もマネジメント・アプローチということで開示した方が良いのでしょうか。

その企業の実態により変わるとは思いますが、個人的には必要ないと考えます。なぜなら、基準で求めている開示はあくまで経営者的な視点に立っての経営指標であり、個別の担当を評価するための指標ではないからです。したがって、仮に部門ごとの評価をするために部門情報を社内で利用しているからといって、これをセグメント情報として開示することは、過度に細かい情報となり、制度趣旨にかえって反することになると個人的には考えます。

 

☆減価償却や資産・負債についても、セグメント情報として開示する必要があるの?

これについても、その会社の実態に応じて変わってくるとは思いますが、上場会社といえども、資産の配分までセグメント別に管理している会社は決して多くないと思います。ただ、損益の状況は一般的には管理されていることが多いと思います。

したがって、あくまでその会社の実体によりますが、減価償却は数字を出せないという理由を考える方が難しいと考えます。実際に、例えばメーカーであれば原価計算を正確に算定するために、固定資産は少なからずセグメント別に管理がされているはずだし、もしこれらを分類していないというのであれば、そもそも原価計算自体が適切に算定されているのかという疑問が残ります。これに対して、資産や負債については共通として認識している会社も多く、実際にはセグメント別に管理するメリットも小さい会社であればあまりないと考えられます。そのため、無理してセグメント開示のために算定する必要は無いと考えます。

つまり、固定資産ぐらいはセグメント別に管理しているはず・・・ということで減価償却は開示できると考えられますが、資産・負債は無理して計算するものと、個人的には考えます。

関連記事

  1. ■会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24…
  2. 資産除去債務の有無を検討する際のチェックシート
  3. ■有償支給とは?有償支給時の会計上の仕訳について
  4. ■内部統制報告制度-一般的なキーコントロール数は200から300…
  5. ■指定管理者情報 中小企業が適用すべき外貨建てとデリバティブの処…
  6. ■製造原価報告書(C/R)と損益計算書(P/L)の関係について
  7. ■第二次納税義務 その② 
  8. 試査と精査

最近の記事

PAGE TOP