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■収支相償

 

準則主義により、登記され法人格を取得した一般社団法人または一般財団法人のうち、様々な認定要件を満たした法人が認定申請をすると、国や都道府県の答申を経由し、行政庁により認定され、公益社団法人または公益財団法人となることができます。上記の様々な認定要件のうちの一つとして、収支相償があります。収支相償とは、公益法人が行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入が、その実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれることをいいます。

 

収支相償は、主として、公益法人が公益事業によって得た利益を内部に留保することを防ぎ、公益目的事業に充てるべき財源を最大限活用し、公益目的事業の受益者に対し、より安価で質の高いサービスを提供することを目的とした制度です。あくまで形式的には、収益が費用を超えている場合には、利益を留保している状態となり、収支相償を満たしていることになりません。一方で、費用が収益を上回っていた場合には、収支相償を満たしていると判断されることになります。

 

ここで、ある年度において、収支相償を満たすことができない場合が想定されるわけですが、この場合には、内閣府が作成している公益認定等ガイドラインやFAQによれば、例えば下記のような方法により、発生した剰余金を解消していくこととなります。

 

まずは、発生した剰余金を、翌事業年度以降において、公益目的事業の拡大や充実のために使用する方法です。しかし、単に他の財源の代わりに剰余金を財源として公益目的事業を実施するだけでは、剰余金を解消したことにならず、剰余金と同額以上の損失(公益目的事業の赤字)を発生させなければなりません。出費の増加、つまり、事業の拡大などが必要となるケースが想定されます。

 

他には、公益目的事業に係る特定費用準備資金を積み立てる方法もあります。この場合には、将来の特定の公益目的事業の実施のため、認定法施行規則第 18 条に定められた特定費用準備資金として剰余金を積み立てます。特定費用準備資金については、将来に当該資金の目的である活動を行うことが見込まれることや積立限度額が合理的に算定されていることなどの要件を満たす必要があり、単に将来の赤字補てんを目的として積み立てることは認められません。

 

この収支相償は、民間の感覚だと、理解に苦しむ部分があるのも事実です。そもそも、赤字を出さないように法人の経営のかじ取りを行うことが、法人運営にあたる者の責務であるという観点から考えれば、事業で黒字が出ることにより咎められるという、およそ世間の常識とは反対の事態となります。黒字になりそうだから、公益目的事業において不要な資産の取得を行う、事業費の支出を無駄に多くして、帳尻を合わせて赤字にすればよいということであれば、官庁の予算によくある期末の無駄遣いと同じ次元です。何より、公益事業で赤字をたれ流していけば、収益事業で稼げない公益法人は、徐々に体力を奪われていくことは明らかでしょう。

以上

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