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第4回目のテーマは監査人がよく行う「分析的手続」です。
監査基準委員会報告書によると「分析的手続」とは、財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいう、とされています。この分析的手続は、監査の様々な段階で様々な目的のために実施されます。
①リスク評価手続 リスクの高い領域を把握する目的
②実証手続としての分析的手続 重要な虚偽表示の有無を確かめるため
③監査の最終段階 全般的な結論を形成するため
この辺りは公認会計士試験でもよく問われています。
①のリスク評価手続としての分析的手続は、通常監査の初期段階で行われます。初期の段階で重要な虚偽表示リスクの高い項目や領域を特定するために異常な増減項目や想定外の状況を識別します。②の実証手続としての分析的手続は、実際の監査の場でよく行われています。例えば、会社の計上している支払利息や減価償却費についてその適正性を検証するためにオーバーオールテストを行います。借入金の平均残高と平均利率から支払利息の推定額を算出します。その推定額と会社計上額との差が許容範囲内であれば適正との判断を行います。その差が許容範囲を超える場合はさらに詳細に検証していきます。借入金の平均残高をより細かく算出すること等の方法によりその差が許容範囲内に収まっていくのが通常ですが、それでも大きく許容範囲を超えるような場合は、例えば簿外の負債の存在がないか等々その原因を探ることになります。また減価償却費もオーバーオールテストに適しています。期首の帳簿価格に対して定額法又は定率法の率を乗じることで監査人の推定値を算出し、会社計上額と検証していきます。期中に取得した資産に対しても月割計算することで検証していきます。そして、監査の最終段階においては全般的な結論を形成するための分析的手続を行います。企業に対する監査人の理解と財務諸表が整合しているかどうかについての判断を行います。多くの場合は趨勢分析(増減分析)、比率分析を行い、実施してきた監査の結論と矛盾していないことを裏付け、監査意見の基礎となることが目論まれており、その際に識別されていなかった重要な虚偽表示リスクを識別した場合には追加の監査手続が必要となります。
このように分析的手続は監査の初期段階から最終段階まで用いられる監査技法であり、監査人にとって非常に重要な監査手続といえます。