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公認会計士の仕事 vol.3

3回目のテーマは「実査・立会」です。

実査は実物検査、実物調査の略語とされ、その対象物の実際の状況(数量、品質、所有権の有無、陳腐化の程度など)を調べることを意味します。一方、立会は「観察」の一種とされ、広義には会社の行う実地調査を観察することを意味し、その中でも企業の従業員が実施する棚卸資産の実地棚卸状況を観察する手続を狭義の立会と呼ばれています。

実査は期末監査時に行います。実査を行う対象資産としては、現金、受取手形、有価証券、預金通帳、預金証書、収入印紙、小切手帳等々です。ここで重要な点がいくつかあります。1つ目は同時に実査を行う必要があるという点です。換金性の高い項目に関しては相互代替、補充が可能になりますのでその防止のために同時実査が基本となります。2つ目は会社担当者の立会いの下で行うという点です。万が一、実査対象物が紛失した場合に無用な嫌疑をかけられることを避けるためです。実査終了後は実査対象物を確かに返却しましたとの確認を書面で求め、署名押印を入手する必要があります。3つ目としては関連証憑との照合を実施することです。期末日近くの取引明細とその領収書の照合を行い取引の実在性を検証する必要があります。私たち監査人は期末日付近になると担当を決め、各自実査に向かいます。本社であれば実査のみの場合もありますが、地方の工場や支店などに実査で向かう場合は同時に棚卸立会を行うことが一般的です。

立会もまた原則は期末監査時に行います。中間期末において立会を行う場合もありますが、あくまで期末での実施が基本です。会社の規模や取り扱う棚卸資産の種類や数量にもよりますが、一般的に棚卸資産を網羅的に把握するには相当な時間、労力を要します。特に、材料や仕掛品、製品等を保管する工場や、多品種の商品を保管する大型倉庫などの場合には、工場の稼働、倉庫の受払いを一旦ストップしなければならないことも多く、実地棚卸のやり直しはきかないことがほとんどです。そのため事前の計画が重要であり、会社が作成する実地棚卸要領等を事前に入手し、その検討が必要となります。立会いの目的は、経営者による指示と手続きを評価すること、実施されている棚卸手続きを観察すること、棚卸資産を実査すること、テスト・カウントを実施することとされています。実地棚卸が「実地棚卸要領」等の規則に基づいて行われているいるかを観察し、棚卸担当者に質問を行います。また、棚卸資産を実査することでその実在性を確かめることに役立つとともに、陳腐化品、破損品、老朽品を識別することにも役立ちます。そして、会社の行ったカウントの精度を検証するためにテスト・カウント(抜取り検査)を行います。なるべく多くの品種を抽出し、リストの数量と実際の数量を検証していきます。

このような手続を1つ1つを積み重ねて、会社の計上する貸借対照表の「現金及び預金」、「受取手形」、「棚卸資産」等々の勘定科目の計上額の適正性を検証していくのです。

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