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金融商品の時価等の開示は、平成22年3月末より適用された会計基準ですが、これが意外に締め切りが早いことやどこまで開示するか、計算方法は、などなど、いろいろな理由で実務的にてこずっている方も多いと思います。
今回は、実務上の留意点も含め、論点をまとめていきたいと思います。
☆意外に締め切りが早いボリュームのある注記情報
当該開示は、連結ベースでの記載で計算書類作成時には必要になってくる情報で、かつその情報量も非常に多くなっています。実務的にも非常に繁忙的な時期に作成するため、留意しないと意外に誤りやすい注記箇所になります。
計算書類をチェックする時には、要チェック箇所といえるでしょう。
☆定性的情報も変更があると記載内容を変更する必要がある。
金融商品に対する取り組み方針やリスクと管理体制等、非常に文章として記載内容が多いところになりますが、内容をよく確認すると抽象的なようで意外に具体的な記載内容も多く、しっかり確認しないと現状の会社の状況とずれてしまう可能性があります。
なので、これら定性的情報も侮らないように確認することが必要といえます。
☆金融商品ってそもそもどこまでをいうの?
〇会計基準の定義
金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称したもの(会計基準第52項)
〇「金融商品会計に関する実務指針」(以下、実務指針)の定義
①一方の企業に金融資産を生じさせ他の企業に金融負債を生じさせる契約
②一方の企業に持分の請求権を生じさせ他の企業にこれに対する義務を生じさせる契約(株式その他の出資証券に化体表章される契約)(実務指針第3項)。
⇒何をいってるのか、分かりにくいですよね。金融商品について、もし分かりやすく砕いていうのであれば、他の基準等で規定している資産負債以外の資産負債で、今後のキャッシュインやキャッシュアウトを伴うもの全てといっても良いと思います。
具体的には、他の基準(棚卸資産、有形、無形固定資産、繰延資産、引当金、繰延税金資産、退職給付債務、資産除去債務等)で具体的に定められているもの意外のほぼ全ての資産負債だといっても、大きくは間違えません。
ただ、前払費用、前受収益等の経過勘定項目については、今後のキャッシュインやキャッシュアウトを伴わないものとなるため、金融商品とならないので留意してください。(もっとも、これらを金融商品として注記している会社も多いのですが・・・)
☆時価情報はどの科目まで記載すればよいの?
実務的に、この点も悩ましい点だと考えます。基準としては特段明確な定めはありません。ただ、当該会計基準の改正趣旨を勘案すれば、以下の点を考慮し、どの勘定科目まで時価情報を開示するかを決めれば良いと思われます。
・B/Sの金額的な重要性
⇒B/Sの中で定量的に重要性のある科目については、制度趣旨を勘案しても時価情報を開示することが制度趣旨に合致すると考えられます。逆にいえば、B/S上重要性の無い科目は、開示する必要は無いと考えられます。
・帳簿価額と時価の差額の重要性
⇒制度趣旨としては、簿価と時価との間で著しく乖離がある金融商品がある場合には、これらの情報を開示すること有用であるため、開示が必要になります。そのため、たとえ帳簿価額に重要性は無くとも、時価との差額に重要性があるのであれば、積極的に開示することが制度趣旨に合致すると考えられます。
☆時価の算定はどのようにするの?
金融商品の時価を決定するのに重要な要素は、その勘定科目自体がキャッシュに変換されるときのリスク要素と、いつキャッシュになるかという時間的な要素で決定されるといえます。そのため、これらの要素の算定方法について、解説していきたいと思います。
〇リスク要素について
一般的な事業会社であれば、負債に重要なリスク要因がある場合は少なく、売掛債権等の債権に関する貸倒リスクが最も重要なリスク要因といえます。
このため、これらの金融資産に関しては科目毎のリスク要因を測定する必要が生じますが、これに関しては貸倒引当金を計算することにより、一般的には算定していると考えられるため、これらを考慮すれば良いというといえるでしょう。
〇時間的な要素について
マイナス金利もありますが、一般的にはキャッシュインまで時間が長期間かかる資産は、価値が下がり、キャッシュアウトまで長期間猶予がある債務は短期に支払う必要がある負債より、負担が少なくなります。したがって、これらを割引計算することにより、時価を算定することが必要になります。
これらを踏まえて計算するには、短期の資産負債はあまり影響が少ないため、一般的にはこれらの要素を考慮する必要は少ないといえます。これに対して長期の資産負債に関しては、影響が大きくなるため、将来のキャッシュインとアウトを割引計算して集計し、時価を算定することが必要になるといえます。
☆割引率はどのように算定するの?
割引率に関しては、色々な算定方法があり、理論的には資本も考慮したWACC等で計算したその会社自体の割引率で算定することが必要になりますが、実際にはこれらの計算を行うことが極めて困難ともいえます。
したがって、実務的には過去の借入等の実績を考慮し、実際の資金調達の平均割引率を算定して、便宜的な割引率として算定することが多いと思われます。
☆制度自体の趣旨や概要について
以下、当該制度の改正趣旨やその概要などについて簡単にまとめます。
○趣旨
・証券化の拡大、金融商品の多様化
・国際基準とのコンバージェンス
○概要
・定性(状況)、定量(時価)についての注記
・有価証券、デリバティブについてのみ適用されていた開示を金融商品全体に拡大。
・金融商品についての注記事項
・取組方針 :資産なら運用方針、負債なら調達方針についての具体的手段を
記載する。会社としてどこまで明文化できているか?
・内容とリスク:内容については、取り扱っている金融商品の内容と説明。
リスクについては
・リスク管理体制:リスクに関する方針、規定、部署、リスク減殺方法ほかを記載
(※1):実務上、特に手間がかかる事から、一年猶予も可能とした
・時価等の情報 :BS額、時価、左記の差額、時価の算定方法などを記載