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公認会計士が行う会計監査においても、税務署が行う税務調査においても、会社から事実関係の確認の意味で、一筆とるという状況は、容易に想像ができます。しかし、経営者確認書と質問応答記録書は、この一筆とるという観点では共通していますが、決定的な違いがあります。
①経営者確認書について
公認会計士が行う会計監査において、会社の経営者から入手する経営者確認書については、監査基準委員会報告書580に定められています。
以下 参考 監査基準委員会報告書580 より一部抜粋
1.本報告書は、財務諸表監査において経営者から入手する経営者確認書に関する実務上の指針を提供するものである。
6.本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。
「経営者確認書」-特定の事項を確認するため又は他の監査証拠を裏付けるため、経営者が監査人に提出する書面による陳述をいう。経営者確認書は、財務諸表、財務諸表におけるアサーション又はこれらの基礎となる帳簿及び記録を含まない。
7.本報告書における「経営者」は、取締役又は執行役のうち、企業における業務の執行において責任を有する者をいい、適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成する責任を有する。
8.監査人は、財務諸表に対する最終的な責任を有し、確認事項についての知識を有する経営者に対して経営者確認書を提出するように要請しなければならない。
9.監査人は、経営者に対して、監査契約書に記載されたとおり、適用される財務報告の枠組みに準拠して 財務諸表を作成する責任(適正表示の枠組みの場合、作成し適正に表示する責任)を果たした旨の経営者確認書を提出するように要請しなければならない。
上記のように経営者確認書については、監査基準委員会報告書580に明文化されており、監査を受ける会社の経営者は、公認会計士あるいは監査法人が発行する監査報告書と引き換えに、経営者確認書を提出することとなっています。
②質問応答記録書
質問応答記録書については、国税庁が平成25年に「質問応答記録書作成の手引について」を職員に配布し、以後、税務調査で利用されることとなりました。平成25年以前にも税務調査の現場では、納税者の意思や事実関係の確認をすることを目的として、名称は異なれど(抗弁書、確認書、供述書、申立書、質問顛末書、申述書etc.)、様々な書面が作成されてきましたが、上記の手引により、国税庁サイドでの扱いが統一された感があります。
しかし、法律に直接の根拠がなく、明文化されていないことに上記の①経営者確認書との最大の違いがあります。公文書として書面の記録を残すことは調査官の自由ですが、法律に直接の根拠がないため、税務調査を受ける立場である経営者が、質問応答記録書に対し、どのように対応するかには、当然選択肢があります(作成に協力するorしない、署名押印するorしない)。
個人的には、この質問応答記録書は、税務調査において過少申告加算税までは決定的な事案で、重加算税まで達するか否かという場面で登場することが多いような気がしますが(人間の心の中までは見えないから一筆とっておきたい…)、そもそも調査官の行う当該記録書の作成が、質問調査権の権限の範囲内か否かについても、微妙なところであり、諸説あるところでしょう。
以上