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株主総会

株主総会とは株式会社の基本的な方針や重要事項を決定する最高意思決定機関です。株主総会というと6月をイメージされる方も多いかと思いますが、まさに今が株主総会シーズンの真っ只中となっています。

定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず(会社法296条1項)、一般的には決算日から3か月以内に招集されます。3か月以内という点に関してですが、会社法において、議決権行使のための基準日を定める場合、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内行使するものに限られる(会社法124条2項)とされており、実質的に3か月以内の招集となっています。

株主総会というと、同じ日に集中して開催されるという時代が長く続いていました。その理由としては、企業の大部分が3月決算であることに加え、決算日後の繁忙なスケジュールが大きな要因となっています。決算期末後45日以内に証券取引所に決算短信を開示することが望ましいとされていること、それと同時に会社法による計算書類(連結計算書類)、注記表(連結注記表)、附属明細書等を作成し、かつ会計監査人による監査報告書を付した招集通知を作成しなければなりません。そして、株主総会招集通知を株主総会の日の2週間前までに発送しなければならず(会社法299条1項)、さらに有価証券報告書提出会社は決算日後3か月以内に有価証券報告書を提出する義務があります(金融商品取引法24条)。このような決算日後の繁忙なスケジュールを考えるとどうしても6月下旬に集中してしまうのです。ちなみに、総会の2週間前までに発送しなければならない法律的趣旨としては、株主に総会への出席機会を確保し、準備のための時間的余裕を与えるためとされています。株主総会の集中化の他の理由として、以前は株主としての地位を悪用し、企業から不当な利益を得るいわゆる総会屋の力が大きく、その影響を少しでも和らげるために開催日を故意に集中させるという事情もありました。また企業側からの考えとしては、株主総会の日を同じ日にすることで参加できる株主を制限し、質疑応答や議論のないよう短時間で終わらせるという「しゃんしゃん総会」を目的とする企業が多かったことも挙げられます。

どの程度同じ日に株主総会が集中しているかですが、過去最高の1995年にはなんと上場企業の96.2%が特定の日に集中していました。その後1996年から2004年頃まで利益供与罪で総会屋を摘発し、総会屋が減少しました。さらに株主総会は「閉ざされた」ものであったことに鑑み、2004年に「経団連企業行動憲章」の改定により企業に社会的責任(CSR)を重視させ、また、2015年にはコーポレートガバナンスコードを策定し、株主との対話を求め、株主総会を対話の場の一つとしてその運営に大きな影響を及ぼしました。そのような取り組みの中で集中率は減少し、2004年には64%まで低下、2014年には40%を割り、昨年は29.6%まで減少しています。それでも上場会社の3割は同じ日に開催しているのが現状で、本年は6月28日に約30%の企業がその開催を予定しています。

その年によっては注目となる株主総会があります。最近ではやはり不正会計が明らかになった東芝や、父娘のお家騒動で揺れた大塚家具、エアバックでリコール問題を引き起こしたタカタ、そして原発事故を引き起こした東京電力といったところでしょうか。今年の株主総会の注目企業はというと、不正がらみでいうと日産自動車、神戸製鋼所などが挙げられますし、またアイルランド製薬大手のシャイアー社を6.8兆円で買収することを発表した武田薬品などが注目となっています。

コーポレートガバナンスコードが2015年に導入されて以後、企業は株主との対話を重視するよう求められています。本年6月開催の株主総会において株主提案があった企業は40社を超え、2014年から比較し2倍近くに増えています。物言う株主が増え、経営陣に対する厳しい視線が注がれており、今後ますます株主総会の位置付けは大きく変わっていくと思われます。

 

 

 

 

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