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資産除去債務に関する会計基準(第18号)・適用指針(第21号)について

資産除去債務のポイント解説(計上しない判断を含む)

資産除去債務に該当するものは、全て計上しないといけないのでしょうか。今回は、資産除去債務に関する会計基準及び同適用指針の解説とともに、実務上のポイント解説を中心に説明していきたいと思います。

○適用時期

平成22年4月1日以降開始する事業年度。

但し、平成22年3月31日以前に開始する事業年度からの適用可

○趣旨

・ 将来の負担を財務諸表に反映させることは投資情報として役立つ

  • 国際財務報告(IFRS)へのコンバージェンス

○定義

有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して、法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるもの

 

①  有形固定資産およびそれに準じる有形の資産から派生する債務

②  取得、建設、開発または通常の使用によって生じる債務

③  有形固定資産の除去に関わる債務

④  法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準じるもの

 

【適用範囲の具体例】

  • 有形固定資産に使用されている有害物質の除去の義務
  • 売却・廃棄・リサイクルその他の方法による処分
【POINT】
  • →建設仮勘定・リース資産、「投資その他の資産」に分類された投資不動産を含む。
  • →法律上の義務・準義務が存在しない場合、該当せず

⇒つまり、単に同義的な義務や商慣習的な義務の場合には該当しません。

但し引当・減損対象の余地あり。

  • →除去:用益提供から除外すること。売却、廃棄、リサイクル含む。
  • →準義務:債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務

 

【適用対象外】

  • 有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕
  • 不適切な操業等の異常な原因によって発生(引当金の計上や減損)
  • 有形固定資産の除去が企業の自発的な計画のみによって行われる場合
  • 使用が継続される転用や用途変更、また資産が遊休状態になること

 

【具体例】
  • 借地契約終了時に当該土地定期借地契約で賃借した土地の上に建設した建物等
  • 建物賃借条件に原状回復義務を約している場合の賃貸物件に付加した有形固定資産
  • アスベストやPCBの除去義務をもつ有形固定資産

 

○Q&A

Q1. 税務上も費用として損金計上できるか?

A1. 税務上の損金とはならず、課税所得の計算の際には加算する必要がある。

Q2. オフィスを賃借しており,賃貸借契約には退去時の原状回復義務の記載があるが、本社移転予定がなく,資産除去債務の合理的な見積もりができない場合。

A2. 注記例『当社は,本社オフィスの不動産賃借契約に基づき,オフィスの退去時における原状回復に係る債務を有しているが,当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく,将来本社を移転する予定もないことから,資産除去債務を合理的に見積もることができない。そのため,当該債務に見合う資産除去債務を計上していない』

 

○ 会計処理

①有形固定資産の取得に関連する資産除去債務の計上、同額を有形固定資産の簿価へ(取得時・計上時)
②時の経過による資産除去債務の増加、同額を費用計上(毎年)
③有形固定資産と、資産計上した除去費用の減価償却(毎年)
④有形固定資産の除去及び資産除去債務の履行(除去時)
⑤適用初年度の処理について
①について

有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって法律上の義務等が発生した時(*注1)に、有形固定資産の除去に関する割引前の将来支出を見積もり、割引後の金額で負債として計上する。(*注2)

同時に資産除去債務に対応する除却費用は資産除去債務を負債として計上した時に当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価格に加える。

(*注1)計上時点は?

・ 資産の取得時点

・ 使用の都度発生、法令変更等により新たに義務が発生した場合

・ 当該債務を合理的に見積もることができるようになった時点

(*注2)資産除去債務の計上金額は?

・割引前の将来CF

合理的で説明可能な過程及び予測に基づいて支出見積もりを計算する。

保管や管理のための支出等、処分に至るまでの支出も含む

・割引率:無リスクの税引前の利率(利付国債の流通利回りなど)

 

⑤適用初年度の処理について

・適用初年度における既存資産に関連する資産除去債務高の算定

→適用初年度の期首時点における割引前将来CFの見積もり及び割引率を使用

・原則、特別損失に計上

・会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱う

 

○ 表示

【B/S】

ワンイヤールール(履行の時期に応じて) 資産除去債務等その内容を示す科目で表示

【P/L】

関連する有形固定資産の減価償却費の計上区分と同じ区分に計上

・資産除去債務に対応する除却費用の費用配分額

・時の経過による資産除去債務の調整額の表示

・資産除去債務の履行時に生じる決済の差額(差額が異常な原因:特別損益)

【注記】

①通常の場合

・重要性の乏しい場合を除いて注記

・多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合には、有形固定資産の種類や場所等に基づいて、注記をまとめて記載することができる。

②合理的な見積もりができない場合

・資産除去債務の概要、合理的に見積もることができない旨、その理由を注記

【キャッシュ・フロー計算書】

・資産除去債務の履行 →支出額を投資活動によるCF

・重要な資産除去債務の計上 →CF計算書に重要な非資金取引として注記

 

 

以上

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