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内部統制報告制度の実務編①です。実務的におこりうる課題等を問題形式でお伝えしていきますので、ご参照ください。
【質問】
決算の過程において、外部からの指摘があった場合に、これが修正された場合において、原則、全ての内部統制の問題になりうるか。
①上記指摘が、証券アナリストの指摘により発見された場合には。
②上記指摘が、会計監査の指摘により発見された場合には。
③上記指摘が監査役からの指摘により発見された場合には。
④上記指摘が内部監査によって発見された場合には。
⑤上記指摘が他の部門の指摘により発見された場合には。
【回答及び見解】
そもそも内部統制の評価を行うのは、財務諸表が適正であることを保証するために行っている。しかしながら、結果として財務諸表が誤るということは内部統制が有効であったと言えるのであろうか。
つまり、会計監査や税務調査といった外部調査での指摘・修正事項があった場合、内部統制で発見できなかったエラーが存在したということになり、関連する内部統制プロセスの評価が適切であったか見直す可能性も生ずる。
したがって、外部調査での指摘事項を内部監査室も認識しておく必要がある。その上で、当初内部統制プロセスが有効であったか、また来期の内部統制監査計画の見直しを検討することが必要となる。
これらを前提に、上記質問に回答するのであれば、
①、②は外部統制のため、適切な内部統制組織が無いということになってしまうと考えられます。
それに対して、④、⑤は部門ごとにみるのであれば問題はあるものの、他の部門により誤りが検出されたのであれば、統制が適切に機能しているといえるのではないでしょうか。また③に関しては、その考え方が微妙だと思います。監査役も含めて会社の統制機能ともいえるものの、監査役自体が組織を設計する立場にないことを、勘案すると改善すべきと考えられるといえるのではないでしょうか?
【質問】
仮に、キーコントロールとして売上高の出荷の際に、出荷伝票に上長の承認印を押すとなった場合において、以下の状況はそれぞれ統制上の問題となるのでしょうか。
① サンプリング時の書類に承認印はなかったが、他の書類にて確かに上長の承認がなされていることを副次的に確認できた。
② サンプリング時の書類に承認印は無く、他の書類でも確認できなかったが、上長にヒアリングを行った結果、確かに当該発注に関して確認しているとの回答を得られた。
③ サンプリングした結果、承認印はあったが、再テストを行った結果、出荷日が実際の出荷日と異なっており、結果的に誤っていた場合。
④ 承認印が部長でなく、社長となっていた場合。
【回答及び見解】
①、②は形式的な誤りといえるでしょう。では内部統制はそもそも形式的なものなのでしょうか。これら形式的な誤りは、誤りとして客観性があるため、指摘や問題点になりやすいとは思いますが、個人的には統制状況が良好であれば、形式的な軽微な誤りともいえるのではと考えます。
③に関しては、明らかに統制上の問題といえます。この場合、上長が承認するとなっているいものの、実質的な2重チェックなどは機能していないといえ、統制上の問題といえると考えます。
④に関しては、考え方により色々な見解があると思い、その状況により適切か不適切かという点では、色々あると思いますが、条件文だけで判断するのであれば、統制上、あまり望ましくないと考えます。たしかに、統制上はより上位者の承認があればそれで組織上の問題はありませんが、そもそも内部統制とは組織が効果的かつ効率的に会社としての目的を達成するためにデザインされるものであり、そのため、問いのケースでは部長が承認されるルールになっていると思われます。しかし、今回の場合はその効果的かつ効率的にデザインされた部長ではなく、社長が承認しているため、ある種、経営資源の無駄使いをしているともいえます。したがって、内部統制上は、状況にもよりますが、このようなケースもあまり望ましくないと考えると個人的には思います。