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試査と精査

監査を実施する会社は巨大な企業から零細な企業までその規模は様々です。例えば巨大な企業の監査を実施する場合、すべての会計処理をひとつづつチェックすることは不可能です。そこで監査は、原則として試査に基づくものとされています。限られた時間、資源の中で効率的に監査を実施するために、リスクと効率性を考慮し、試査の範囲やサンプル数、実施時期を決定します。試査の定義としては、特定の監査手続きの実施に際して、母集団からその一部の項目を抽出し、それに対して監査手続を実施することである、とされています。そして、試査の方法としてはサンプリングによる試査と特定項目抽出による試査があります。

サンプリングによる試査は、母集団の中のすべての項目が抽出される可能性があるようにしなければならず、その結論は母集団全体に関する結論を導き出すための手法です。一方、特定項目抽出による試査は金額が○○円以上、決まった得意先との取引、過去に誤りが発見された取引等々、特定の性質を有する取引を選んで実施する手続となります。したがって、サンプリングによる試査とは異なり、母集団全体に対する結論は導き出すことはできません。母集団全体に対する結論を導き出すためには、母集団の残余部分に対して追加の監査手続を実施する必要があります。

精査とは、全ての取引や項目について監査手続を実施することです。母集団のすべての項目をCHECKすることになりますので、比較的件数の少ない項目で実施されますが、重要な虚偽表示リスクが高く、精査以外の方法では十分かつ適切な監査証拠が得られないと判断される場合にも用いられます。

監査の目的は、財務諸表には全体として重要な虚偽表示はないという絶対ではないが相当に高い程度の心証を得ることにあります。これを合理的な保証を得たと表現しますが、企業の経済活動を100%検証することは不可能ですし、財務諸表には経営者による見積りや判断が多く含まれており、監査自体の限界が存在します。したがって原則として試査に基づいて監査を実施しているのです。

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