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■内部統制報告制度 - サンプリング数は25件?

内部統制報告制度(監査)のサンプル数(サンプリング)は25件?その根拠は?

内部統制報告制度において、運用テストを実施する時、サンプリングは何件抽出すればよいのでしょうか? 皆、疑問におもうところだと思います。実施基準としては、「運用状況の評価の実施に際して、経営者は、原則としてサンプリングにより十分かつ適切な証拠を入手する。」とされており、その具体数までは記載されていません。

ここで、実務においては25件とよく言われますが、なぜでしょう?それは、実施基準の中のガイダンスで、「例えば、日常反復継続する取引について、統計上の正規分布を前提とすると、90%の信頼度を得るには、評価対象となる統制上の要点ごとに少なくとも25件のサンプルが必要になる」と記載されています。

そもそもサンプリングとは?

ちなみに、そもそもサンプリングとは、母集団の件数が多いときに、全体をチェックすることは出来ないので、一定の抽出を行うサンプルのことをいいます。そして、そのサンプルを基礎にに母集団全体の状況を推定することになります。

統計学における考え方

統計学においては、その母集団の妥当性を検討するために有意水準という概念が用いられますが、この有意水準とは、

“統計的仮説検定を行う場合に,帰無仮説を棄却するかどうかを判定する基準。5% あるいは 1% がよく使用される。有意水準5% で検定を行うということは,第 1 種の過誤をおかす危険率が 5% であることを意味する。すなわち,同様の調査・検定を行うと,20 回に 1 回は得られた結論が誤っていることを表す。「有意水準 α で検定すると有意な差が認められた」ということと,「危険率 α のもとで有意な差があるといえる」は同じような意味で使用される。”

とのことです。

難しいですが、一般的には1%ないしは5%がよく利用されるのであり、90%の信頼性というのはどうかという疑問はあるものの、とにかく、この25件が良く利用されていると思います。なお、場合によっては30件ないしは50件というケースもありますが、これらの根拠は、上記のガイダンスではなく、統計学的な考え方で導かれたのではと考えます。

これらをみても分かるように、明らかにサンプル数として必要十分な数というのは、決定されないため、これらの件数に関しては会計監査人とよく協議し、必要な数をサンプリングすることは必要になってくると思われます。

SOX法における十分なサンプリング数について

では、日常反復継続的な取引以外の取引(日時統制、週次統制、月次統制など)に関しての、十分なサンプリング数はいくつなのでしょうか?これに関しては、SOX法を参考にされることが多いと考えられますが、そのサンプル数に関しては、以下のとおりです。

 

日常反復継続的なサンプル数  ⇒ 25~60件

日時統制のサンプル数     ⇒ 20~40件

週次統制のサンプル数     ⇒  5~15件

月次統制のサンプル数     ⇒ 2~4件

四半期ごとの統制のサンプル数 ⇒ 1~2件

決算期ごとの統制のサンプル数 ⇒ 1件

母集団が少ない場合のサンプリング数の選定に関して

では、そもそも母集団が少ない場合のサンプル件数はどのように選定するのでしょう?これについては、明確な参考はありませんが、以下のように考えることは出来るでしょう。

 

【日常反復継続的なサンプルであるものの、対象母集団が少ない場合】

250件~650件超 ⇒ 上記で算定された25~60件

上記未満     ⇒ 母集団の90%程度を下限として、サンプル数を決定

 

いかがでしょうか。

いずれにしても、母集団の妥当性を検討するためのサンプル数に関しては、監査上は統計学的には必ずしも一般的ではない方法によっているのも事実であり、その数に関しても考え方で大きく変わってくると考えられます。したがって、大事なことは、論理的に選定するもの勿論ですが、会計監査人の方法と同様の方法などにより、協議して決定していくことが重要と考えます。

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